愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~



お見合いから数日経った頃。
閉店した毛利亭を出ると、十時を回った辺りは真っ暗だった。実家に帰ろうと歩き出したとき。


「毛利さん」


コツ、と足音がして、月明かりに照らされた人物に声をかけられた。


「月島くん!」


柔和に微笑んだ月島くんは、毛利亭の前の通りに横付けした車の前に立っていた。
紺色のセットアップに、清潔感のある白いシャツ。オフスタイルなのだろうか。


「こんな時間にどうしたの? もう閉店しちゃったけど」
「うん、毛利さんを待ってたんだ」
「えっ」
「デートに誘いたくて」


デート?
こんな遅い時間に、私と月島くんが。デート?

数秒間思考が停止する。
ぱちくりと目を瞬かせていると、背後から近づいてくる足音が聞こえた。


「菜緒?」


その低い声にハッとして、私はすぐさま振り向いた。


「こ、河本さん」
「どうしたんだ、そんなところに突っ立って」


毛利亭の玄関から出てきたばかりの河本さんからは、通りに立つ月島くんは塀もあるし死角になっていて見えないようだ。


「まだ夜は冷えるだろ。そんな薄着でウロウロするのはよしなさい」


こちらに歩み寄りながら父親のような調子で言う河本さんは、視界に入った私以外の人物に驚いて目を真ん丸にした。


「あっ、ええと……お客さんか?」


キョロキョロと視線をせわしなく動かし、私と月島くんを見比べる。


「はじめまして、月島です」
「月島……あ!」


月島くんが一礼すると、夜道に響き渡る大声を上げた河本さんは、合点がいった晴れやかな表情になった。
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