愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「今夜デートに誘うことは、きちんと断ってあるから」


横目でこちらを見た月島くんは、ニッと口端をつり上げる。


「明日の予定は?」
「ええと、明日は服を見に行こうと思ってて」
「服?」


月島くんがちらりと私の装いを見た。
しまった、今服の話題を出すのはまずかった。


「今度結婚式に出席するから、そのドレスをね!」


部屋着のようなファッションから話題をそらしたくて、とっさに私は早口で言った。

河本さんの結婚式で、私は和装ではなくドレスで出席することにした。
美弥子さんと一緒に美容室を予約したら、絶対に行かなきゃならない流れになってしまうのが怖かった。

ドレスにして、髪も自分でセットする予定にすれば、当日の朝に怖気づいても大丈夫だという保険だ。


「結婚式? 友だちの?」
「ううん。友だちではないかな」
「じゃあ親戚?」
「親戚ってわけでも……」


しばらく沈黙が流れる。
頑なに口をつぐんでいるのも決まりが悪い。


「職場の人。さっき会った料理長なんだけど」
「河本さん?」
「うん」


軽く頷いて、私は窓の外に目をやった。
大通りはまだ人通りが多く、チカチカ光るネオン看板が眩しい。


「毛利さん、どこか行きたいとこある?」
「え、行きたいところ?」


と言われても……困る。
毛利亭と実家の往復ばかりだし、いつも閉店後は実家でぐったりなこの時間に外を出歩く機会がほとんどないので、営業しているお店もよく知らない。

お洒落なバーのひとつやふたつ知っていたら様になったかもしれないけれど、月島くんは車だからお酒は飲めない。

というか、男性とデートした経験すらないんだもの。気の利いた返しなんて無理だ、と諦めかけたとき。


「うわぁ……」


遠くの方で、いくつもの電飾が建物を象るようにキラキラと輝いているのが見えた。
たしかあの建物はホテルだったと思う。カップルたちで賑わっているとテレビで見た。
イルミネーションや夜景は夜しか楽しめない。


「夜景とかはどうかな?」


思いついたまま、私は軽い気持ちで提案した。
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