愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
優雅にグラスを傾ける月島くんの隣で、私はとっさに頬を両手で覆った。
たしかにちょっと、河本さんが絡むと動揺していたかもしれない。きっと不自然に映ったよね。


「まあ、なんていうか……初めての人だから」


両頬を手のひらでギュッと潰し、くぐもった声で私は白状する。

その後の月島くんの動きは凄まじく速かった。
ちゃぷんと波打ったグラスをテーブルに置いた矢先、私の背中に反対の手を回した。
最初から動きをプログラミングされていたかのように正確に、私の肩を抱き寄せる。


「きゃ!」


驚いて小さな悲鳴を上げる。
瞬く間に、唇が触れ合うほどの至近距離に月島くんの綺麗な顔が見えた。
真剣な眼差しで見つめられ、少し怖くて目がそらせない。


「っあの!」


唇が接近してきたので、私は顔を背けると反射的に月島くんの体を押し返した。
力任せに体を後方に追いやられた月島くんは、ハッと我に返ったような表情になる。

驚きと戸惑いに包まれた時間が流れた後。


「ごめん、ヤキモチ」


月島くんがぽつりと発した。


「……ヤキモチ?」


言葉の意味が理解できない私は、首を捻ってオウム返しする。


「〝初めての人〟って言われたから……」


言いづらそうに歯切れの悪い口調で、月島くんはうつむいた。

初めての人、って……もしかしてなにか勘違いしてる?


「初めての人って、初恋って意味なんだけど」
「え?」


月島くんは放心したように目をしばたかせた。やはり完全に勘違いしていたらしい。


「体の関係みたいなのはなにもないし……!」


私が両手をブンブンと盛大に振って否定すると、月島くんは乱暴に頭を掻き、気まずそうに前髪を揺らした。


「早とちりして、ごめん」
「ううん、こっちこそ。誤解を生む言い方ではあったよね」
「お詫びに明日、ドレス選びを手伝わせて」
「へ?」
「俺は会社に行かなきゃだから、夕方からになるけど」

< 22 / 119 >

この作品をシェア

pagetop