愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「月島くんが休み時間に体育館に行ったり、トイレに行ったりするたびにファンが後を着いて行ってたの、〝月島の大移動〟って言われてたんだよ。知ってる? 女の子に大人気だったよ」


呂律が回らないので、私はゆったりとした口調で言った。


「でも、好きな子から好かれないと意味ないし」


月島くんは結構皮肉っぽい性格みたいだ。


「月島くん、当時から本当にカッコよかったもんね」


私は捻くれた子どもっぽい月島くんをフォローして、グラスを煽る。
テーブルにグラスを置こうとしたら、体が左右にふらりと揺れた。


「毛利さん、だいぶ酔ってるね」


月島くんが苦笑いする声が、遠くで籠もって聞こえる。
おかしいな、目の前のテーブルもグラスも二重に見えた。


「ちょっと今日は、予約が立て込んでたから忙しくて。アルコールの効きがいいみたい」
「横になる?」


にっこりと邪気のない顔で微笑む月島くんが、自分の膝をポンポンと叩く。


「そこに寝るのはさすがに無理」
「なんだ、残念」
「けど、同級生だからかな。なんかやっぱり安心しちゃうんだ」


目蓋が重くなってきた。
さすがに調子に乗って飲みすぎたな。

初めて来た他人の家。しかも男性で、さっきキスされそうになったのに。
小さい頃から知ってるからか、気を許せてしまう。


「安心、か……。複雑だな」


耐えきれなくなって目を閉じ、真っ暗になった世界で最後に響いたのは、ひどく弱った月島くんの声だった。

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