愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
電話を切ってリビングに行くと、キッチンにワッフルが用意されていた。
チョコレートソースがかかっていて、すっごく美味しかった。
いつの間に食材を準備してくれたんだろう。これも、コンシェルジュに頼んだのだろうか。

服は昨日と同じまま、洗面所をお借りして顔を洗い、食べ終わった食器を片付けた私は月島くんの家を出た。
午前九時を回っていた。
エレベーターで一階まで降りると、私はフロントの前を通り過ぎる際、コンシェルジュにペコリと頭を下げた。


「毛利様」


声をかけられ、私はいたずらが見つかった子どものようにビクッと両肩を上げて足を止める。


「は、はい」
「月島様より、タクシーを手配するよう仰せつかっております」
「へ⁉」


わざわざそんなことしてくれなくても……とただただ恐縮している間に、コンシェルジュが手配したタクシーに乗せられた。


「ありがとうございます」


慣れない扱いにカチコチに緊張してコンシェルジュにお礼を言い、私は月島くんのマンションを後にした。

なんだかすごく、私の日常とはかけ離れた体験をした気分……。
毛利亭の前でタクシーを停めてもらうと、乗車料金も前払いというおまけ付き。

今日月島くんに会ったらちゃんとお礼をしなくちゃ、と思いながら実家の玄関に向かっている途中だった。


「お、菜緒。おはよう」


庭の前でストレッチしていた河本さんが、私に気づいて片手を挙げた。


「いっちょ前に朝帰りか?」


昨日と同じ部屋着のような格好のまま、気まずくて顔を歪める私をからかうように笑う。


「友だちと遅くまで飲んでて」
「友だち?」


片眉をピクリとつり上げ、意味ありげに語尾も上げた。


「昨日会ったお見合い相手の月島さんて方、菜緒の小学校の同級生なんだって? 優作から聞いたよ」
「あ、うん……」
「小学校の頃、よく男子にいじめられて俺に泣きついてきてたよな。懐かしいなぁ」


腰に手をあてて上体をそらすと、河本さんは空を見上げて目を細める。
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