愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「あの小さかった菜緒が結婚するなんて、感慨深いな。俺も年取ったってことだ」


河本さんはしみじみとした思い出に浸ったような口調で言った。

私が河本さんを好きだと自覚したのは、たぶん中学生の頃だ。
同級生の友だちとの間で恋バナが増えてきたとき、友だちにとって同じクラスの男子や、サッカー部の先輩だった恋の相手が、私にとっては河本さんだと思った。

小学生のとき、私は毛利亭の古い日本家屋が恥ずかしいと思っていた。
同級生の男子に、お化け屋敷みたいってバカにされたんだっけ。
だからお城のような洋館に憧れていた。

それを河本さんに泣きながら話したら、毛利亭がどれほど歴史があって素晴らしい建物であるかを教えてくれた。
私を見守ってくれて、家や家族を認めてくれて、励ましてくれる初めての他人だった。

家族のようで家族じゃない。
私は自分より歳上で、なんでも知ってて料理も得意な河本さんに憧れていた。
一緒にいてドキドキするような存在ではないけれど、そばにいられたらうれしかった。
そういう恋の形だった。

懐かしい感情に浸りながら、私は自分の部屋に帰ってやっとひと息ついた。

月島くんのフォローがよかったのか、母から昨夜の件を問いつめられたり咎められることもなく休日をのんびり過ごし、夕方になった頃。

今朝電話がかかってきた番号から〝これから迎えに行く〟とショートメールがきていたので、昨日の二の舞にはならないとばかりにきちんと準備していた。

シャワーも浴びたし、月島くんの高級車に乗せてもらっても少しは恥ずかしくない格好に着替えた。
落ち着いたブルーの色合いのリバティプリントのワンピース。

玄関に行くと、夕日をバックに白い高級車の脇に立つ、あたかもCMのいち場面を切り取ったかのような出で立ちの月島くんが目に入った。
昨夜のセットアップスタイルよりもカチッとした黒の細身のスーツとサラッと着こなしている。


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