愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「すみません、ありがとうございます」


ブラウスとスカートを受け取って、私は店員さんに頭を下げる。
袖を通すときにプライスカードを見て、私は自分の目玉が飛び出たんじゃないかと思った。


「こ、こんなに高いの⁉」


光沢のある華奢なレース素材のブラウスと、艶感があるのに柔らかくて触り心地のいいスカート。
さすが、高価なだけあって着心地は抜群だし、なによりシルエットがとても綺麗。


「かわいい……」


ため息交じりにつぶやいて鏡の前でくるりと回ってみる。


「……貯金下ろそうかな」
「毛利さん、どう?」


フィッティングルームのドアの向こうから月島くんの声が聞こえて、私はビクッと肩を跳ね上がらせた。


「あ、うん!」


もう一度鏡で自分の姿を確認し、深呼吸をするとドアを開ける。


「どうかな?」


正面に立つ月島くんの反応を直視するのが恥ずかしくて、私はブラウスの裾やスカートの翻り方を確認する振りした。


「うん、すごくいい。似合ってる」


一拍置いて発した月島くんは、どこかうわの空のような言い方をした。


「ほんと?」
「ああ。あんまり素敵だから、驚いて言葉がすぐに出てこなかった」


私の全身に目を通した月島くんは、最後に目を合わせ、柔らかく微笑んだ。

家族にかわいがられ、甘やかされて育ってきた私だけれど、この甘すぎる褒められ方には顔から火が出そうだった。


「ありがとう……」


照れくさくてまともに顔を見られないので、小声でそれだけ返すのが精一杯。
回れ右をして、後ろ手でドアを閉めた。

着替えてフィッティングルームを出ると、私がなにか言う前に、さっさと月島くんが黒いカードで支払った。
料亭で働いている身なので、そのカードは限られた人しか持っていないとよく知っている。

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