愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~



若葉を揺らす爽やかな風が心地よい、よく晴れた五月の週末。
ホテル内のチャペルで、河本さんの結婚式が執り行われた。

チャペルの窓からは、季節の花が咲き誇る可愛らしいガーデンが見える。
神々しく日光が透過するステンドグラスも、キラキラと輝く噴水の水滴も、ガーデンに降り注ぐ木漏れ日もすべて幸せを象徴する光景で、ふたりを祝福しているようだった。


「奥さん、海外で働いてて、本当はずっと日本に戻らないつもりだったらしいよ」


親族席のうしろ側に座り、開始を待つ間、背後にいた河本さんのご友人たちの話し声が聞こえてきた。


「同窓会で再会して、とんとん拍子でくっついたんでしょ? 運命感じるよね!」


本当に、人生なにがあるかわからない。

本来であれば、交わることのない運命線上のふたりだったかもしれない。
もしも河本さんと奥さんが、同窓会で再会しなかったら。

そうしたら私は……。
河本さんに自分の気持ちを打ち明けていただろうか。
お見合いの話がなければ、月島くんとも再会しなかったかもしれない。

パイプオルガンの音楽が鳴り、新郎が待つ神父の前に、真っ白なウエディングドレスを身に纏った花嫁が歩み寄る。


「綺麗……」


この世のものとは思えない美しさに涙が出た。

河本さんは深い愛情が籠もった温かい眼差しを、自分のもとに近づいてくる花嫁に一心に向けている。
決して脇見などせずに。

物理的にではなく、心が遠くにいってしまったような感覚が胸の奥からどんどん湧いてくる。
河本さんが私から離れて行く。
もう手が届かない。

ずっとずっと大好きだった。
そばにいてくれて当たり前の存在だったから、体が半分削ぎ落とされたように痛い。
けれども私はもう、守ってもらうような小学生の子どもじゃない。

今までありがとう、と心の中でつぶやいて、私は頬に伝わる涙をハンカチで拭った。

式は滞りなく進み、披露宴に移る。
何度もハンカチで目を押さえる私を、兄は心配そうにチラチラ見ていた。

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