愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「は、はぁ、は……」


顔を真っ赤にして息を乱す私の額に自分の額をコツンと合わせた涼介さんは、至近距離で瞳を見つめる。


「早く俺を好きになるように、おまじない」


心を覗き込むような深い眼差しと、ささやくときの湿った息遣いに、際限のない色気が宿っていて美しさにゾッとした。

優しい口ぶりとはあまりにもかけ離れた強引さに、私は狼狽していた。


「こ、こんなの、心臓に悪いよ!」


両肩をグーにして涼介さんの体を思いっきり押し返し、なんとか抗議する。
いろんな考えや気持ちが頭の中で錯綜し、混乱して、目には涙が浮かんできた。

私の今にも泣きそうな表情に、ハッと目を見開いた涼介さんは、悲しげに睫毛を伏せる。
すぐに両手を広げると、私の体を抱き寄せた。


「ごめん……。でも俺、菜緒にドキドキしてほしいんだ」


体が軋むほど強い抱擁に驚いて、涙が弾ける。


「え?」
「前にほら、俺と一緒だと安心するって言われたから、こういう刺激があるのもいいかなって」
「刺激的すぎるよ」


あえて声の起伏をなくし、平坦なトーンで私は言った。
冷静になれ、と自分に言い聞かせる。


「はは、ごめん。俺、菜緒のことになると抑えがきかなくなるみたいだ」


ポンポンと頭頂部を優しく撫でられて、私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
ファーストキスは、涙の味だった。
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