愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「今、女性の悲鳴が聞こえましたけど」


耳に届いたその男性の声に、私は鼓動が激しくなりつつも、心から安堵したように温かい空気に包まれてゆくように感じた。
緊張と安心が交差する、不思議な心境。


「どうかしました?」


部屋に入って来たのは涼介さんだった。


「いえ、なにも」


私は平静を装って答える。

どうして今ここに……? と聞きたいのは山々だけれど、今はこの状況を上手く抜け出さなければならない。

藤井さんはただただ呆然として、突然部屋に侵入してきた涼介さんを見つめている。


「ただちょっと驚いてしまっただけでして……お騒がせしてすみません」


私はすっくと立ち上がり、涼介さんの方を向く。
このまま何事もなかったかのように部屋から出よう、という私の希望は、残念ながら叶わなかった。

掴まれて赤くなった手首を押さえている私に気づいた涼介さんは、依然固まったままの藤井さんに一歩ずつ間合いをつめる。


「うちの妻に、なにかしました?」


私が知っている涼介さんの声色ではなかった。
絞り出すような苦しげな声には、険があった。


「うちの、妻……?」


オウム返しした藤井さんは、眉を引きつかせる。


「おい、聞いてんのか」


怒気を含んだ威圧的な声。
藤井さんの前に立ちはだかった涼介さんの拳は震えていた。

その光景に私は戦慄しながらも、涼介さんのそばに駆け寄る。


「なんでもないんです、本当に!」


このままでは事が大きくなってしまう。
それを阻止するためになんとか涼介さんを落ち着かせなければ。

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