泡沫夢幻


ピアノの繊細な音色が会場を包み
優しい歌声が夜空いっぱいに響く。


歌い終わると団員はステージから降りて、客席にいる家族に一輪のひまわりを渡し始めた。

あ、これ椿さんが必死に用意してたやつだ。
オレンジの模造紙にひとつひとつ丁寧に包まれたそれに1人感動していると
祖父母と話していた水瀬が声をかけてきた。
「常盤くん、すぐ戻ってくるから待ってて!」

そう残してステージ裏へ駆けていく水瀬を見ていると、おばあさんがぼそっと呟いた。
「ひよりも強くなったわね…」

あの子、お母さんが亡くなってから声が出ないときがあったのよ。声が戻ってからも声楽団には戻ろうとしなかった。
クリスマスに連れて行った声楽団のイベントで復帰を決めたみたけど思うように声が出なくてほとんど口パクでね…
今日は嬉しそうに歌ってくれたから、本当に良かったわ

おばあさんはそう話してくれた。

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