泡沫夢幻
「水瀬の歌声ってほんと綺麗だよな」
聴き惚れてた、と今日の感想を伝えると水瀬がまるで子供のように、白い歯を見せて嬉しそうに笑う。
今日の感想なんてそんなに時間稼ぎできるわけもなく、歩き始めて数分で沈黙が訪れた。
そういえばいつも俺たちは聞き役だな、と思ったらなんの話をしようか迷ったりしているとあっという間に家に着いてしまった。
鍵を開けて手荷物を玄関に置いて植木鉢の方に案内する。
今は月下美人の鉢植えしか置いてないが、母さんが元気だった頃はもっと様々な種類の植物が植えられていた。
かすかに、花の香りがしている、気がする。