寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「どうかな。雪乃を見てれば、ご両親に大事に育てられたんだと分かるよ。俺は少し年が離れているから、部下の雪乃を好き勝手に扱っていると見られたら、あまりよく思われないだろうな」
晴久はこの期に及んで雪乃を子供扱いすることで、ぎりぎりに自制心を保っていた。
両親に大切にされている彼女に安易に手を出してはいけない。わざわざ口に出し、そう自分に言い聞かせている。
(落ち着け俺……。ここまで言ったんだぞ、手を出したらダメだ)
そうとは知らない雪乃はモゾモゾと動いて晴久の腕から抜け出し、うつ伏せになって頭を持ち上げ……。
「そんな。好き勝手なんてされていないですし、誰もそう思わないですよ。それに晴久さんは大丈夫ですし……」
そうつぶやいた。
このまま寝ようとしていたまどろみの中、晴久は、彼女のそのひと言に一気に目が覚めた。
〝大丈夫〟という言葉がじわりじわり、自分の我慢とは見合わない評価をされている違和感が喉もとまで込み上げてくる。
「……待って。大丈夫ってどういう意味?」
大人しく聞いていることはできず、ついに彼女に聞き返した。
本当は全然大丈夫ではないのだ。
聞き返されるとは思っていなかった雪乃は「えっ」と戸惑いの声を漏らしたが、晴久は頭を上げている彼女と対角線になるようじっと視線を合わせ、逃がそうとしない。