寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
シネマシアターを出て、屋外の冷たい風にさらされる。
まるで付き合いたての学生のすることだったなと正気に戻った晴久だが、隣を歩く雪乃の顔はまんざらでもない。
唇をふにふにと弄ったり、時折熱い頬に手をあてて冷ましたりと、いい反応をしている。
「映画面白かった?」
「あ……はい! すごく! お家で観るのと映画館で観るのでは全然違いますね。内容もすごくドキドキしましたし……」
またいじめたくなって、フッと笑みを落とす。
「だから顔が赤いの?」
「そっ、そうですっ。映画のせいです」
「そうか」
「……晴久さんのせいですよ」
雪乃はむくれながらも晴久の裾を握り、そろそろと腕を組み直した。
彼女のすることがいちいちかわいくてたまらず、恋人に意地悪をしたり言葉で攻める趣味なんてなかった晴久も、ふとしたときに妙な欲が止まらなくなる。
(初めてだな、こんなふうになるのは)
深呼吸をして抑えながら、もしかして今までの恋愛は恋愛ではなかったのではないか、とさえ考えた。