寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「私は雪乃ちゃんだって分かったけど、ほかは誰も気付いてないと思う。もちろん誰にも言ってないよ。ていうか、言わない方がいい。嫉妬されて大変なことになるから」
皆子は人差し指を立ててアドバイスをしたが、当の雪乃には響いていない。
今の彼女にとって、自分に対する嫉妬など問題ではなかった。
それよりも社内の女性にプライベートを知られることを極端に避けている晴久にとって、メッセージが出回っている今の状況の方が最低最悪の事態だと言える。
晴久に迷惑をかけている、雪乃はそれだけで頭がいっぱいだった。
「皆子さん……これって、どこまで広まっているんですか……?」
スマホごと皆子の手を握ってすがりつく。そんな思い詰めた雪乃の様子に皆子もギョッとした。
「広報部と総務部の若手にはほとんど回ってると思う。繋がってる人が多いし」
「そんな……」
青い顔がさらに白くなり、唇はカタカタと震え出す。
皆子は「大丈夫だよ」と慰めるものの、別のところにある雪乃の不安が払拭されることはない。