寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

(あ……!)

そのとき雪乃は、ちょうど対面の席に座っていた男性が 〝彼〟であることに気付いた。スーツの上にコートの、あの憧れの人である。

思わぬサプライズに、一瞬だけ恐怖が吹き飛んだ。

彼は腕を組んで目を閉じ、鞄は腕の中、傘は脚の間に立てかけて、電車の揺れに身を任せている。

帰りの電車で彼と出くわすのは初めてである。彼が常にこの時間まで働いているのだとしたら、いつも夕方には帰宅している雪乃と電車が合わないことは当然だ。

遅くまで仕事を頑張る人。またそんな妄想が膨らみ、密かにドキドキしていた。
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