寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「許してもらえるまで手は出さない。ベッドに入っても我慢する。だから距離を置くのは勘弁してくれないか。連絡もしてほしいし、今まで通り会ってほしい」
彼の祈るようなお願いにドキドキが止まらなくなった雪乃は、抱きしめられながら心臓が破裂してしまいそうだった。
「頼むよ雪乃。こんなの耐えられない……」
(晴久さんっ……)
あまりの言葉に感激してたまらず、雪乃も抱きしめ返そうと彼の背に腕を回そうとしたが。
晴久の背後から自転車がやってきて電灯に照らされると、ハッとした。
慌てて彼の体を離し、「ダメですっ」と叫ぶ。
「……雪乃?」
自転車は通りすぎていった。乗っていたのは買い物中と思われる中年の女性。
しかしまた会社関係者に目撃されたら……とゾッとした雪乃は、晴久から離れて「ごめんなさい」と言い残し、エントランスへ走り去った。
残された晴久は「雪乃っ」と声をかけるが、エントランスを閉められてしまったためこれ以上は追ってもどうしようもない。
その場に立ち尽くし、彼女を追って宙に浮いていた腕を戻した。