寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
伊川は「なんだと!?」と叫びそうになったが、同期であっても相手は課長であるため悔しそうに顔を歪め、「どうしてですか」と言い直す。
「さっき岡田の数字は静観すると言ったのに、達成している俺の実績には危機感? 新規をとるなということですか?」
「違う。新規先にこだわるあまり、既存先がおろそかになっている。契約の前後でこうも熱意が変わっては信頼を失いかねない」
伊川は納得がいかない。
「でも目標は達成してます。熱意なんて数字には現れません」
「これから徐々に現れる。事実、機器の入れ換えの相談が減ったんだろう? 入れ換えを見送ったのではなく他社を検討しているのかもしれない。出向いて確認したほうがいい」
晴久はここまでで「以上です」と切り上げ、次長へバトンタッチした。次の議題に移っても、伊川は晴久を静かに睨み続けていた。