寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

始業時間までかかると見込んでいた会議だが二十分の余裕を持って終えることができ、晴久は余った時間でフリースペース前の自動販売機でコーヒーを買った。

心なしか、フロアが騒がしい。

(なんだ?)

フリースペースの向こうは総務部である。
先ほどからそこへ営業部の社員も吸い寄せられるように集まっていくのだ。

「あ! 高杉課長! 会議お疲れ様でした!」

「小山」

総務部へ集まっていく流れに乗っかっている小山が、ちょうどやって来た。

「課長も総務部行ってみましょうよ! すごいことが起きてるらしくて!」

「すごいこと?」

「細川さんですよ! 隠れ美人の! なんと今日、顔出しで出勤してるんですって!」

「……は?」

晴久の脚は慌てて流れに乗り、小山を追いかける要領でゆっくりと総務部のオフィスへと寄っていく。

まさか、そんな、と思いながら総務部の入り口であるガラス戸の側まで来ると、そこにはすでに営業部の若い男性社員が群がっていた。

その視線の先には、美しい素顔を何も隠さず皆子と話している雪乃の姿がある。
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