寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
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昼休憩。
晴久の歩みは力強く、軽やかに、昼食のためフリースペースへと向かった。
午前の仕事にいつも以上に気合いが入り、プレゼンや営業指導は納得のいくパフォーマンスを発揮した。
彼の心の片隅には、ずっと、先ほど素顔で微笑んでいた雪乃がいて、まるで彼女の存在が勝利の女神のように心強かった。
流出した写真を目にした者にはもれなく雪乃と恋人同士だと知られてしまう。
しかしもう彼女が隣にいてくれるから、顔を隠すことも、朝からカフェに寄ることもしなくていい。
何にも怯えず、素性を明かしていいのだと思うと、今までの憑き物が落ちたかのように晴久の心は軽くなった。
(雪乃が勇気を出してくれて、よかった)
自分たちの生活を取り戻せる。
雪乃とふたりでこれから本当の恋愛ができるのだ。
(……ん?)
いつもは人のいないフリースペースに、今日は先客がいた。
気にせず入ろうとしたが、漏れてくる声から、中にいるのが雪乃と岩瀬だと分かった晴久は、咄嗟にドアの前で足を止めた。
岩瀬に呼び出された雪乃は、フリースペースのど真ん中で彼女と対峙している。
「私、高杉課長に告白しました。すぐ連絡が来て、フラれましたけど。細川先輩ひどいです。知っててなにも教えてくれなかったんですね」
綺麗な顔をぐすぐすと崩して泣いている岩瀬を前に、雪乃は困惑していた。