寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「さ。細川さん、ここへどうぞ」
隣の席を示され、雪乃は戸惑う。テーブル席で話すのかと思っていたのに、隣り合ったカウンター席では少し妙な関係に見られてしまう気がしたのだ。
しかしマスターもニコニコして「どうぞ?」と促しているし、雪乃が席につかないせいでウェイターの女性もいつまでもおしぼりが渡せない状態。
耐えきれなくなった雪乃は、複雑な表情で伊川の隣へと座った。
「……伊川さん。相談をお聞きします」
この人とはカップルではない、とマスターに知らせる意味で、彼女はすぐにそう切り出した。
伊川は眉を寄せる。
「細川さんまずは一杯いただいてからにしよう。マナーだよ」
「え? あ、すみませんっ。じゃあウーロン茶で……」
「おいおいおいおい。ここはバーだよ? 美味いカクテルがいくらでもあるんだ。マスターに仕事させないつもり?」
「そ、そんな……」
お酒は飲まなくていい、と聞いていたはずなのに。雪乃は困惑したが、伊川は一応会社の上司であり、強く言い返すことはできなかった。