寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「あらら。細川さん大丈夫?」
伊川はニヤニヤと笑いながら雪乃の肩に手を添え、席に座らせた。彼女はゾッとするものの、グワングワンと回る視界では反抗もできない。
「すみません、わ、たし……酔ってしまったみたい、で……もう帰ります……」
「ええ? 危ないよひとりで帰るなんて。家まで送ろうか」
「いい、です……ひとりで……」
鞄をプランと持ってカウンター席から降りるが、彼女はまた崩れ落ちた。
伊川は、紅潮して荒い息をしている雪乃の体を「おっとっと」と支えるふりをしながら、ベタベタと触る。
マスターはさすがに心配そうな視線を送り「タクシーを呼びましょうか」と声をかけたが、伊川が「いい、いい」と蹴散らした。
そこへ、着信音が鳴り響く。
「あ……私の……」
雪乃はもう一度鞄に手を突っ込み、鳴りながら振動しているスマホを捕まえた。
しかしすぐに滑り、カシャンと落ちて床をスライドしていく。
伊川はそれを拾い、そして電話に出た。
『雪乃!!』
「はーい。細川さんは今出られません」
『なっ!? 誰だ!?』
電話口からは大きく割れた晴久の声が響き、マスターにまで聞こえている。