寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

明日会社で問い詰めを受けるつもりでいた伊川は、今この場に晴久が現れたことで戸惑いを隠せない。
しかし、彼への反抗心もあり、強気な態度は崩さなかった。

バーの外へ出ると何人か酔っぱらいが歩いており、酔いつぶれている雪乃は目立たない。

しかしこれから決闘でも始めるかのような剣幕の男ふたりには、通行人から視線が注がれている。

「伊川」

「なんすか。別にまだなにもしてませんよ」

伊川が無意識に使った〝まだ〟という言葉に、晴久の纏う空気は余計に張りつめる。

「俺になにか恨みでもあるのか」

しかしこの言葉に、今度は伊川が顔を歪めた。

「恨み……? そんなもん、自分の胸に聞いてみたらどうだよ! 俺の仕事の足ばっかり引っ張りやがって! 正当に評価されない俺の身にもなってみろ!」

ついに敬語を捨てて思いの丈をぶちまけても、晴久は彼には動じない。

その代わり、怖い顔をしたまま、腕の中に抱いている雪乃に話しかけた。

「雪乃。起きて」

「……ん、んん……」

雪乃はうっすらと目を開ける。
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