寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「どうしてこんなところにいた。知らない男について行ったのはなぜ」
彼の冷たい質問に、彼女は意識が朦朧としながらもじわりと涙を浮かべた。
「伊川さん、が……私に、相談が、ある、って……晴久さんの、こと、で……ファミレスに、行くはずで……でも、ここに……」
「そうか。わかった」
晴久はまた鋭い視線を向ける。ばつが悪くなった伊川は拗ねた顔を背けた。
「伊川」
「なんだよ」
真面目に釈明などする気のない伊川は悪態をつき続ける。
しかし晴久は手を伸ばしてもう一度彼の胸ぐらを掴むと、鬼のような顔で睨み付けた。
そしてどす黒い声で呪文のように、伊川の顔に言い聞かせる。
「いいか伊川。お前は雪乃に嘘をついた。この子の親切心を利用してバーに連れ込んで酔い潰したんだ」
「だからなんだよ」
「お前はいつもそうだ。人の好意を道具のように扱い、用がなくなったら捨てる。契約が欲しいがために平気で嘘をつき、その後についてはまったくフォローをしない」
「だから、そんな感情論は営業に必要ないだろ!」
通行人が振り向き、ザワザワと噂をする。晴久はため息をつき、胸ぐらを離すと、声のトーンを落とした。