寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「伊川」
呼ばれるまま力なく顔を上げ、晴久を見た。
「トーワシステムズの社長には変更を保留してもらうよう俺から頼んでおいた。社長もそのつもりで連絡してきたようだからな」
「えっ!?」
「明日、直接謝罪しに行くぞ。俺も帯同する。心配するな、今後このようなことはないと約束すれば、契約変更にはならないだろう」
伊川の表情には一筋の光が差し、地べたに手をついて「本当に……?」と立ち上がる。晴久がうなずくと、彼は救世主でも見るかのような視線に変わっていった。
しかし、晴久はもう一度だけ伊川の胸ぐらを掴みあげた。
「いいか覚えておけ。仕事ではどれだけ俺に不満を言おうと構わない。……だが、もし次に雪乃を巻き込んだら、俺はお前を許さない」
本気の目つきにゾッと恐怖を感じながら、伊川はうなずいた。
「……すみません、でした」
彼を乱暴に解放した晴久は雪乃を抱きしめ、タクシーを停めた。