寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

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土曜の夜、ふたりはホテルの展望ラウンジにいた。

今日は、横浜の港を一望するこの景色の中を一日中デートし終え、このホテルに一泊する。

今日はふたりが付き合って一ヶ月。

高級ホテルのスイートルーム、夜景を眺めながらのディナーは、晴久からのプレゼントだ。

付き合うのが初めてである雪乃のために、晴久は些細な記念日も祝う心がけをしている。

雪乃は夢見心地でワイングラスを傾け、素直に「美味しい」とコース料理を楽しんだ。

「ねえ、あそこのカップル、ふたりともすごい美形じゃない?」

そんな噂話がヒソヒソと聞こえてきた。

ドレスアップした美男美女にホテル内の誰もが振り返るが、本人達は完全にふたりの世界に浸り、見つめあっている。

「でも、よかったです。晴久さんと伊川さん、仲直りできたんですよね」

紅茶のティーカップを両手でふんわり包み、雪乃は揺れる水面を眺めながらつぶやいた。

「いや、仲直りっていうか……。出社したら普通に謝ってきたし、帯同中も反省していたから仕事中は問題ないよ。でも雪乃は引き続き警戒するように」

「はい。よかった、誤解がとけて」

お持ち帰りされそうな雪乃を発見したときは肝が冷えたが、彼女のおかげで伊川と和解できたのも事実。複雑な心境だが、平和な彼女の笑顔に絆されつつあった。
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