寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
比較的新しい住宅が並ぶ区画で雪乃が案内を開始し、五分ほどで二階建ての白い家に到着した。
備え付けられた三台置ける駐車場にはすでに車が二台ある。
空いている残りひとつに、雪乃の両親が手を振って立っていた。
会釈をしながら車を入れ、オーライの指示に従いバックで停める。
車を降りてきた晴久に、彼女の母親は腰を折って会釈をした。
「遠いところまで来てくださってありがとうございます」
「はじめまして、高杉晴久です。よろしくお願いします」
にこやかな垂れ目で、長い髪をひとつに結っている母親と、笑顔ながら緊張気味の父親。
ふたりの顔はよく似ており、あたたかい雰囲気の彼らに晴久はホッとした。
雪乃は「お盆ぶりだね」と両親との再会を喜びながら、自然に晴久と腕を組もうとした。
「……晴久さん?」
反射的に雪乃の手を避ける。
まだ挨拶が済んでいないのに彼氏ぶるわけにはいかないという硬派な姿勢を崩さず、「なんでもない」とつぶやいて、代わりに彼女の背中にポンと触れた。