寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

「……雪乃」

ピクピクと緊張する腕に力を入れ、晴久は見つめ返した。
しかしーー。

「だめだよ」

めったにない彼の拒絶にキョトンとする雪乃。

「神社に行こう」と先を歩きだした晴久に、戸惑いながら時間差でついていく。

人の往来はない道なのにどうしてキスしてくれなかったんだろう、そんな不安を感じていた雪乃だが、人が通ると恥ずかしいからかなと納得し、気にするのはやめた。

緑の中にぽっかりと姿を見せた神社は小さく、近所の地元民に愛されている。
赤い鳥居が見えていて、その先に目を凝らすと奥まって拝殿があるつくりになっていた。

誰もいない静かな砂利道を踏みしめ、まるでバージンロードのようにふたりきりで進んでいく。

お賽銭を入れてガラガラと鈴を鳴らした。目を閉じ、うつむいて、願い事をする。

(晴久さんとずっと一緒にいられますように)

雪乃は心の中でそうつぶやき、同じタイミングで目を開けた晴久をちらりと見上げる。

「晴久さんはなにをお願いしました?」

ポッと赤い頬の彼女に、彼は笑みを落とす。

「雪乃と同じだと思うよ」

「晴久さん……」
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