寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

彼と故郷へやってきて大好きが止まらなくなった雪乃は、キョロキョロとあたりを見渡した。

「あの、今なら誰も見てませんよ」

雪乃が背伸びをして、目を閉じた。

何度目にしても恋人のキス待ち顔に胸がドクドクと鳴り響くが、晴久は今回は目を逸らし、絡みつく彼女の体を正した。

「晴久さん?」

「ごめんね。今はキスできない」

意地悪ではなくハッキリと断られた。雪乃はピキンと固まり、「どうして?」とすぐに焦りだした。先ほどから二度目だ。

本当は神社という神聖なシチュエーションでキスをしてみたかった晴久は、ぐらついている欲求をゴクリと飲み込む。

「キミのご両親に認めてもらえるまではなにもしない。今夜、お話しするだろう? それまでは控えよう」

「え? うちの両親は認めてます。反対してませんよ」

「うん。でも、きちんとお話しするのが先だ。さっきのごあいさつは十分ではない」

彼女の父親が見せた複雑な表情が引っ掛かっていた。晴久の決意は揺らがず、理解できず首を傾げている雪乃の髪を撫でる。

「……誰も見てなくても?」

「そう、誰も見てなくても。頑固でごめんね」

不安になりつつ、彼の強い意志にキュンとした雪乃はむくれながらも納得した。

頑固、と表現したが、彼のこうと決めたら曲げないまっすぐなところは大好きだった。

晴久に任せておけばすべて大丈夫。恋人に全面的な信頼を寄せている雪乃は、笑顔に戻って「戻りましょう」と手をとった。
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