寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「晴久くん……」
「はい」
「小さな町役場だが、俺も長いことサラリーマンをしているから分かるよ。キミは仕事ができるだろう。三十ちょいで課長なんてすごいじゃないか。職種は?」
「営業職です」
「だろう。佇まいで分かる。でもね! 俺は晴久くんの本音が聞きたいんだよ! 営業トークはけっこうなんだ、さあさあ飲みなさい」
ちょうど届いた晴久の分のビールを、受け取った母親から奪いとった父はそのままぐいぐいと晴久の口もとへ押しつける。
突然目の前で波打つビールにさすがに驚いた晴久は「飲みます飲みます」と制しながら、きちんとジョッキの取っ手を持った。
「お父さんっ」
雪乃は真っ青になって止めるが、晴久は彼女に「大丈夫」とつぶやいた後、ビールを一気に飲み干す。
グッ、グッ、グッ、と喉が動いた。
音を立ててテーブルに空のジョッキを戻した晴久は、フーッと息を吐いて酔いを逃がす。
「いくらでも飲みますよ。それで信じていただけるなら」
「晴久さん!」
父はさらにビールを追加した。
雪乃の制止も聞かず煽られるがままに飲みまくる晴久と父を、娘と母は唖然と見つめるしかなかった。