寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
一時間後ーー。
「晴久さん、大丈夫ですか?」
机に突っ伏しそうになった晴久の肩に触れ、雪乃は彼の顔を覗き込んだ。
「ん? んん、大丈夫……」
雪乃にもかすかに酔いがまわっているものの、晴久はその比ではない。
顔を上げた彼はうつろな目を揺らし、空のジョッキをまだ酒が入っているかのように握りしめ、肩を上下させながら荒い息をしている。
「晴久くん……キミはけっこう、飲めるんだねぇ……驚いたよ」
対抗して飲み続けた父も、「もうやめてちょうだいアナタ」とたしなめられながらこの期に及んでちびちびとビールをあおっている。
女性陣は深いため息をつき、そのせいで皮肉にも場はいったん落ち着いた。
「お父さん。これ以上晴久さんを困らせないで。私のことすごく大事にしてくれるし、尊敬できる素敵な人だよ」
「ううん、分かってる、分かってるよ雪乃……。彼はいい人だ……いい人なんだけど……」
父はジョッキを置いた。
ガシガシと頭をかきながら、ばつが悪そうにブツブツとつぶやいている。