寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
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大手企業への営業を終え、晴久は小山と近くの蕎麦屋へ入った。
そば粉が香る爽やかな和の店内。
店主と妻、アルバイトの女性がせわしなく動く中、慣れたふたりは「座るね」とアイコンタクトで腰をおろし、ひと仕事終え袖をまくってリラックスする。
「お疲れ様です、課長! くーっ! さっきの商談シビれました! 今日契約まで持っていけるなんて、さすが課長ですね!」
「小山。声が大きい」
スパンと小山の頭にチョップを落とす晴久だが、商談中に気を張っていた反動だろうと「ま、お前もよく頑張ってたな」と激励した。
契約がとれたお祝いに、天ぷら特盛のざる蕎麦を注文する。
「うめー! ここのマイタケの天ぷら、マジでうまいですよね。いいんですか課長、こんなのご馳走になっちゃって」
(……まだご馳走すると言ってないぞ、小山)
一応おごるつもりでいたため突っ込まずにうなずいたが、晴久はこのお調子者の将来が本気で心配になった。