寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
帰宅すると、雪乃は食材の入ったエコバッグを晴久から受け取り、ひとまずキッチンに置いた。
使うものは調理台に、使わないものは冷蔵庫へと振り分け始める。
「なにも揃ってなくてごめん。全然料理しないから」
申し訳なさそうに頭をかきながら、忙しく動く雪乃の周りをそわそわと歩き回る。
買い物中も「お醤油はありますか?」「油はありますか?」と何度か聞かれた晴久だが、どれもまともに答えられず、雪乃は途中から聞くのをやめて迷わず買っていたのだ。
「いえ。家にあったものを少し持ってきているので大丈夫ですよ」
「え、わざわざ持ってきてくれたの?」
「はい。ちょっとですけど。男の人は機会がないと作らないですよね。コンビニやお弁当屋さんも充実してますし」
手際よく片付けを済ませ、彼女はもう一度手を洗う。
「何か手伝おうか」
「これは泊めていただくお礼なので、今日はおまかせ下さい」
エプロンの紐を後ろで縛りながら、雪乃は笑った。
新婚みたいだと俗なことを考えた晴久は、恥ずかしくなってソファへ引っ込む。
彼女を急かさないために、ノートパソコンを開いて持ち帰った仕事を始めた。