白球と最後の夏~クローバーの約束~
「はぐれたら心配だし」
稜ちゃんの右手がわたしの左手をギュッと握った。
恋人同士のように指を絡めて歩きたいなんていうのは、あくまでわたしの勝手な妄想。
実際は、こうして普通に手を握られただけで心臓があっちこっちに飛び跳ねる。
「ありがとう・・・・」
やっとそう言えるまで、わたしはどれだけ苦労したんだろう。
でも、稜ちゃんの手、いつの間にかぐっと男らしくなっていたんだね。
ゴツゴツというか、ホネホネというか、大きくて分厚くて、野球ダコも感じる。
この手に守られる女の子は一体どんな子なのかな?
・・・・わ、わたしだったらいいな。
なんていう妄想がまた暴走した。
うっかり迷子になっちゃうほど広い駅ビルの中を、手をつないで歩く稜ちゃんとわたし。
上へ昇るエスカレータに乗るときも手はつないだまま。
わたしは、ちょっと汗ばんだ稜ちゃんの手を未来の妄想と重ねて握り返した。
それから、何年ぶりかに触れた手の感覚、感触、感動・・・・いろんなものを忘れないようにしっかり心に焼きつけた。