白球と最後の夏~クローバーの約束~
「よし、1回の表だな。まずは肩慣らしか? 大森のヤツは」
「ん〜・・・・」
相変わらず皮肉っぽい岡田君。
わたしはあいまいに返事をした。
絶対に自分もワクワクしてるはずなのに、そう言っちゃうのは・・・・やっぱり“投げられない”からなのかな。
そう思うと、なかなか・・・・。
笹本先生もチームメイトも、岡田君の苦しいところを分かっているから、皮肉っぽいところには触れないんだ。
そうこうしていると、花北高校の1番バッターが打席に入った。
稜ちゃんは、バッターの立ち位置や構え、癖なんかを、下から上に向かってじっくり見る。
最後に笹本先生をチラッと見て、それからコクッって頷いて、大森君にボールを投げた。
拳でキャッチャーミットをパシッと叩いて、胸の前で構える。
それが稜ちゃんからの“いつでもこいっ!”っていう合図。
投げる球種は決まっている。
真っ直ぐのストレート。
大森君が一番得意な球種で調子を上げさせたいんだよね、稜ちゃんは。
稜ちゃんはよく分かってるんだ、みんなのこと。