谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜
「……リリコンヴァーリェ嬢」
突然、対面の長椅子から立ち上がった大尉が、リリの前にやってきた。
そして、その場で片膝をついて跪く。
「……グランホルム大尉?」
驚きのあまり口を覆おうとしたリリの手を、大尉がすかさず取る。
今まで大尉は、リリとの挨拶の際には、必ず彼女の手の甲にぎりぎり触れないところで形だけの口づけをしていた。
だが、今は違った。
リリの手の甲に、彼がしっかりと自分の唇ををつけたのだ。
しかも……手袋をつけていない素肌に。
その瞬間、リリの手の甲が燃えるようにカッと熱くなった。
「……グ、グランホルム大尉⁉︎」
すると、大尉がソファに座るリリを見上げた。
ミルクをたっぷり含んだ珈琲のような瞳の色だ。
なぜかそのとき、リリの心臓がどくり、と音を立てたような気がした。
とたんに、彼女の頬がカーッと火照った。