谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜

「あの……大尉、いつまでもそのように(ひざまず)かれては落ち着かなくて……どうぞ、こちらにお座りになって……」

リリは自分の気を落ち着けるためにも、彼を長椅子(ソファ)に促した。
大尉は言われるまま、すぐ隣に腰を下ろす。

しかし、二人の間はあまりにも近かった。舞踏会で踊ったダンスのときと変わらないくらいだ。

なので、リリが思わず後退(あとずさ)りして距離をとろうとすると、大尉はすぐさま彼女の両手をその手に取って、やさしく包み込んだ。

「リリコンヴァーリェ嬢、私はあなたが望むことなら、どんなことでもすべて叶えるつもりだ」

ミルクのたっぷり入った珈琲(フィーカ)のような大尉の瞳が、いつの間にか熱のこもった深い琥珀色(アンバー)に変わっていた。

「……それでも、私たちはもう互いを伴侶と呼ぶことはできないのか?」

吸い込まれそうなほど、強いつよい眼差(まなざ)しだった。

「そ、それは……この期に及んでこの結婚を取りやめるなんて……あなたの自尊心(プライド)(ゆる)さないからおっしゃっているのだわ……」

リリは目を逸らしながら、苦し紛れに言った。

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