病んでる僕と最強の勇者たち
「リリーの魔法は世界一。

リリーはかわいいだ~けじゃないぞ。

リリーの魔法に恐れをなしたか?

いけ! リリー! て~きを倒せ!」



リリーに至っては緊張感の欠片もなかった。



自作の歌を楽しそうに歌いながら歩くその姿は、まるで遠足に出かける子供のようだ。



どうして同じパーティで、こんなにも戦闘前の態度が違うのか?



僕は三人の強烈な個性に改めて驚いていた。



そして、僕たちが城門の前に着いた頃、リリーは歌を歌うのをようやく止めて、木製の魔法の杖にたくさんの魔力をためていた。



僕はリリーの持つ魔法の 杖が赤く輝き出すのを見て、その魔法の杖にどれほどの魔力がため込まれているのだろうと、想像していた。



「城門を開けたら、すぐ目の前に敵がいるはずです。

私たちはお城の中に敵が入るのを防ぐために、あなたたちがお城の外へ出たならば、城門を閉めなくてはなりません。

もうしわけありませんが、ご理解下さい」




そう言った護衛の兵士の言葉を聞いて、僕は戦闘が始まると同時に退路を絶たれてしまうことを知った。



いわゆる背水の陣の戦いで敵と戦い負けることは、死に直結する危険なことだ。



僕は死の危険と隣り合わせのこの戦いに、不安と緊張感を感じていた。
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