ゾーイ・テイラー〜温もり、のちにキス〜
「千年ほど前からこの国にいる民族さ。音楽や芸術に優れた人が多い。普段は森で暮らしているんだ。昔は街で音楽を披露してもらったりしていたんだけど、今は悪い魔族のせいで数人しかいないからなぁ……」

店主の話を聞いている間、ロネがチラリとゾーイの方を見るとゾーイは何かを考え込んでいるような顔だった。何を考えているのか、ロネには大体わかる。

「ゾーイ、シビラ族の人を悪い魔族から守ろう!!」

酒場を出てからロネはそうゾーイに言う。ゾーイは大きく頷いた。

「このまま放っておくことなんて、できない」

二人はシビラ族についてもっと知るため、足早に図書館へ向かった。



ロネとゾーイがリリスに到着して数日が経った。ロネとゾーイは森の中を歩いている。森の中は町より雪が積もっていた。

「精霊の姿はあるけど、やっぱりシビラ族はいないな」

ゾーイがマフラーを巻き付け、白い息を吐く。ロネも「そうだね」と言いながら探し物を探す呪文を唱えた。何も現れない。
< 11 / 32 >

この作品をシェア

pagetop