ゾーイ・テイラー〜温もり、のちにキス〜

「あなたたちは誰ですか？なぜ俺たちを攻撃するんですか？」

ロネは杖を構えたまま訊ねる。フードをかぶった人物たちはロネたちを睨みつけ、言った。

「その女の目、まるでガーネットやルビーのようだ！高値で売れる！」

「その女を寄越せ！寄越せ！」

フードをかぶった人物たちはゾーイを見つめ、欲望に満ちた目を向ける。人身売買を行う悪い魔族たちのようだ。ロネは厄介なことになったなとゾーイを強く抱き締めながら思った。

「ゾーイは誰にも渡さない！！」

ロネはそう言い、瞬間移動の魔法の呪文を唱える。旅のおかげで高度な魔法が使えるようになったとはいえ、十人以上を相手にするのはゾーイを危険に晒すことになってしまう可能性が高い。

「ロネ？何を……」

「ごめんね、気分が悪くなるかも」

ロネはゾーイを抱き上げる。目の前がグニャリと歪んだ。



バタン、と大きな音を立ててロネとゾーイは地面に倒れ込む。その途端に数人の人の声が聞こえた。

「大丈夫かい？」

「この二人、空中から現れて……」