ゾーイ・テイラー〜温もり、のちにキス〜
「そうだ!」

ロネはかばんの中から魔法薬を取り出す。体調不良を整えるものだ。ロネはそれを水に溶かす。しかし、これでゾーイが飲んでくれるわけではない。

「ゾーイ、ごめんね」

具合の悪そうなゾーイにロネはそう言い、コップの水を飲む。そしてゾーイの顎を持ち上げて唇を重ねた。

「んっ!?んん〜!!」

突然のことにゾーイは驚いているが、離すまいとロネはゾーイの後頭部に手を当てる。ゾーイが息を吸うために口を開けた刹那、ロネは口の中に入れた水をゾーイの口腔内に流し込んだ。

「んっ!んんっ!!」

ゾーイが水を全て飲んだことを確認し、ロネは唇を離す。すると、それを黙って見ていた店主たちが「兄ちゃん、大人しそうな顔してやるな!」と笑った。

「はあっ……。人前でキスをするなとあれほど……」

ゾーイが顔を真っ赤にし、口に手を当てる。ロネは「嫌だった?ごめんね」とゾーイを見つめた。その顔は逸らされたものの、ゾーイの耳は赤い。
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