異世界和カフェ『玉響』。本日、開店いたします!
「はあ……どうしようかな」

「うん? あとは、餡を挟んで、店の焼印を捺せば完成だろう? 何を迷っているんだ?」

「う、ううん。何でもない」

 心の中で呟いたはずだった言葉が、口から零れていた。

 慌てて笑顔を作り、誤魔化す。

 父は不思議そうな顔をしていたが、すぐに職人の顔になり、私に指示を出してきた。

「よし、じゃあ、さくっとやってしまおうか。しかし、亜梨子は物覚えがいいな! この調子なら、すぐに店のメニューも覚えられる。先が楽しみだ」

「さ、さあ……それはどうかな」

 父には申し訳ないが、その言葉には素直に頷けない。

 未来は苦痛と決まっていて、何の楽しみもないというのが本当だと思う。

 私に少しでも才能があれば、父の言葉にも喜ぶことができたのに。

 ――ああ、普通って辛い。

 どうにかどら焼きを仕上げ、息を吐く。

 見た目だけは綺麗にできたどら焼きは、父はいつだって及第点をくれるけど、本当は物足りないと思っていることを知っている。

 今日もどうせ、同じなのだろう。
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