異世界和カフェ『玉響』。本日、開店いたします!
「うん。美味い。亜梨子の作る菓子は美味いな!」

「ありがとう」

 笑顔で褒めてくれるが、やっぱり『次に進もう』の言葉はもらえなかった。

 娘だから「美味しい」「上手」と言ってくれているだけで、やる気を削がないように褒めているだけで、父は私のどら焼きにちっとも納得できていないのだ。

 ――気づいちゃうってのも、嫌だよね。

 才能のない自分が恨めしい。

 ――お父さんと何が違うのかなあ。

 自分でもできあがったどら焼きを一口、囓る。

 なかなかの味に仕上がったと自分では思うのだが、これでも父基準では失格らしい。

 何が駄目なのか、全然分からない。

 分からないという辺りが職人として失格なのだろうけど、分からないものは分からないのだ。

 父は褒めるだけで欠点を指摘してくれないし、誰か私に、駄目なところを詳しく解説してはくれないだろうか。

 父以外に食べてくれる人のいない今の状況では不可能なことくらい理解しているけれども。

「うん。また明日、お父さんと一緒に頑張ろうな」

「……あー」

 父の言葉に曖昧に笑う。

 永遠にどら焼き作りから逃れられない自分に大概嫌気が差してきた。

 水場で蛇口を捻りながら、父に言う。

「……明日は、講義の後、友達と買い物に行きたいから」

「そう……か」

「うん。ごめんね。お父さん」

「いや、友達づきあいも大事だからな」

 笑って頷いてくれる父に申し訳なさが先立つ。
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