異世界和カフェ『玉響』。本日、開店いたします!
 だけど、そう長くは続かなかった。

 何故なら、私の作る菓子には特別な何かがないと気づいてしまったから。

 あえて言うのなら、普通。

 普通に美味しい。だけど、その壁を越えられないのだ。

 職人としては致命的だと思う。

 何故それに気づいたのかと言えば、父の反応から。

 父は毎回私の作ったものを「美味しい」と言って喜んで食べてくれる。

 だけど決して、次のステップには進ませてくれないのだ。

 私の作れる和菓子は、どら焼きだけ。

 いつだって、父は私にどら焼きを作らせるだけで、その他の和菓子を教えてはくれない。

 そして、それが一、二回ではなく五回、六回と続けば馬鹿でも悟る。

 私が父の求めるレベルの味を作り出せていないのだと、つまりは、能力不足なのだと気づいてしまったのだ。

 勿論、自分でも、自分の作ったどら焼きを食べた。

 普通に美味しいと思った。

 十分、通用するのではないかと思った。

 だけど、父基準では満たせていないのだろう。

 玉響に並ぶ商品としては、不合格とみなされたのだ。

 だから、毎回追試のようにどら焼きばかり作らされる。

 そして、父を満足させられず、また同じ場所をグルグルと回る羽目になるのだ。
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