氷の美女と冷血王子
この思いは、止められない
ウウゥーン。
思いきり伸びをして、ベッドサイドの携帯へ手を伸ばす。

12時30分。
カーテンの隙間から差し込む強い日差しから考えて、昼の時間。

そろそろ起きようかな。
せっかくのいい天気だから洗濯物でも干そう。
最近部屋干しばかりだから、たまにはお日様で乾かしたい。

誘拐騒動から1ヶ月が過ぎ、私の日常も以前に戻った。
体にはまだいくつかの傷跡が残っているし、悪い夢を見て眠れないこともあるけれど、なんとか平穏に毎日を過ごしている。
こうやって我慢していれば、いつかイヤな記憶も消えるはず。私はそう信じて日々を過ごしていた。

ピコン。
母さんからのメール。

『麗子、あなた最近全然食べれてないでしょ。できれば内科で見てもらいなさい』

なんだか、母さんの心配する声が聞こえてきそう。

『はいはい。時間があればね』

なんて言いながら、きっと行かないだろうな。
だって、原因はわかっているんだから。

色々あって鈴森商事を辞めた私は、今は母さんの店の手伝いをしている。
夕方から店に出て、深夜まで働き、昼過ぎまで寝て又夕方仕事に行く。
昼夜逆転のような生活だけれど、今の私にはそのくらいしかできることがない。
そう思ったらやるしかなかった。

もちろん、母さんは「しばらくゆっくりしなさい」と言ってくれたけれど、貧乏性の私にはできるはずもなく、こうして毎日働きに出ている。

はぁー、食欲ないな。
牛乳だけ飲もう。
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