【短編】恋愛モルモット~恋の価値観~


先輩を好きだった気持ちとは、違う気持ち。

憧れだけのキレイな気持ちとは……違う気持ち。


考えてみれば最初からそうだった。

……宮城の、あの笑顔を見た時から。


自分だけのモノにしたいって思った。

誰にも見られたくないって思った。


その時からあたしは――――……っ




「里咲? 早く行くぞ」


少し先を歩いていた宮城が不意にあたしを振り返る。

勝手に待っていたのに、わざわざあたしを気遣って声を掛けてくれた宮城に嬉しくなって……


「あ、うんっ」


そう言って宮城に追いつこうとした時。

後ろから呼び止められた。



……―――― 憧れてた人の声に。




「杏奈ちゃん」


振り返る先にいた先輩に、あたしは一瞬だけ顔を強張らせて……微笑んだ。


「あ……おはようございます、先輩……」

「……元気?」


それはきっと、先輩なりにあたしを気遣っての発言だったんだと思う。

自分勝手に振った事を何度も謝ってくれるような先輩だったから。


「はいっ、元気です」


強がった訳でもなんでもない。

普通にそう言って笑う事が出来た。


確かに好きだったけど、今でも好きだけど……それはどこかリアルじゃない気持ち。

一方通行で満足できる気持ち。

恋愛経験の少な過ぎるあたしが、恋だって勘違いしてた気持ち――――……



それを気付いたのは……宮城との時間のおかげだった。

宮城の、宮城への気持ちのおかげ。



気付いたばかりの、この気持ちの――――……



本当の恋のおかげ。



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