【短編】恋愛モルモット~恋の価値観~
笑顔を向けるあたしに、先輩は同じように笑顔を返して……すれ違い様にあたしの頭を撫でた。
ふわりと撫でられた頭に、ドキドキはしたけどそれは恋とは違う事が理解できた。
似ているようで違う「好き」の気持ち。
先輩の事は好きだったけど、だけど、あたしが一緒にいたいのは……
悪い面だっていっぱい知ってるのに、それでも好きだって思えるのは――――……
思い当たるたった1人の人物をこの目に映したくて、あたしは宮城を振り返る。
だけど、瞳に映った宮城はすごく険しい表情をしていて……見た事のない宮城に、あたしは顔を歪めた。
声が掛けられないほどの威圧感。
辺りを包む緊迫感。
どうすればいいのか分からずにそのまま宮城を見つめていると、宮城は恐い目つきであたしを見つめたまま口を開いた。
「……里咲といると、落ち着かない」
「え……」
……それは、明らかに拒絶だった。
見た事のない宮城の怒った表情がそれを伝えている。
落ち着かないって……なんで?
あたしっ……何かした?
なんで? だって……さっきまで普通に……あたしを待っててくれたのに……
「……なんで?」
「……分からないけど、見てるとイライラする」
「イライラ……そっか。……そっか」
それ以上、言葉が出てこなかった。
だって、思い返してみれば、あたしは宮城の言う通り、宮城を苛立たせる事ばかりをしていた気がして。
昨日の噴水の事だって、恋愛感を押し付けた事だって、こんな風に待ち伏せした事だって……
あたしが宮城にしたり言ったりした全部の事が、宮城をそうさせてしまっている気がして……
言葉が、見つからない。
「……あたし、先行くねっ」
必死に作った笑顔で、それだけ言うのがやっとだった。
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