【短編】恋愛モルモット~恋の価値観~
「宮城……」
予鈴が鳴って教室に戻ると、あたしは宮城の机の前に立って思い切ってその名前を口にした。
名前を呼ぶだけでも、胸がドキドキしていて……宮城の視線があたしに向けられても、あたしは俯いている事しか出来なかった。
「……今日も校門で待っててね?」
あたしの言葉に、宮城がどんな表情を浮かべたのか見られなかった。
宮城の目が、見られなかった。
……今朝みたいな拒絶を表していると思うと、恐くて。
「そのつもりだけど?」
「……そっか。ありがと」
あたしの声を掻き消すように本鈴が鳴って、5時間目を担当する先生がドアを開ける。
すぐに席に着いたあたしを、宮城はしばらく見ていたように感じたけど……きっとあたしの勘違いだ。
授業が終わったら、宮城はあの子とデートする。
そう思うと授業が終わって欲しくなかった。
そうすれば、あたしはずっと宮城の隣にいられるのに、なんて馬鹿げた愚かな願い。
でも、本音の願い――――……
そんなあたしの願いが叶うはずなく、授業は順調に進み終わりの時を迎える。
そして、普段から短いHRはいつもよりも短く感じて……最後の礼が終わる。
席を立つ宮城が横目に映り、身体がびくんと竦む。
……行かないで。
行かないで。
行かないで、宮城――――……
行かないで……
声にならないあたしの声が、自分の机へと落ちる。
あたしはギュッと唇を噛み締めて……ゆっくりと教室を出た。
ゆっくり、ゆっくり下駄箱までを進んで……
校門を出る時、いつも宮城が待っていてくれた場所を見たけど、そこには宮城の姿はなかった。
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