不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「引っ越しの手配は問題なかったか」
「あ、はい。やっぱりそこまで持ってくる荷物もなかったので、あっという間でした。段ボール四箱で」
「そうか。で、そこで何をしてたんだ?」
「あ……洗濯機の使い方でも見てみようかなと思いまして。他の家電もひとつずつ取扱説明書と一緒にチェックしていたところで」
そう答えると、桜坂社長はランドリー室へと入ってくる。
私のそばに立ち、手にしていた取扱説明書を覗き込んだ。
急に近づいた距離に肩が緊張する。
なんとなく感じていた、いつも桜坂社長が纏っているシトラス系の爽やかなな香りが鼻をかすめた。
「使えそうか?」
「はい……たぶん、ですけど……。こんな最新家電初めてなので、なんとかやってみます」
「わからなければ一緒にやろう」
「え……」
思いもよらない言葉に顔を上げる。
思ったよりも近くに端整な顔が迫っていて、目が合って慌てたように取扱説明書に顔の向きを戻してしまった。