不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「――ぐみ、つぐみ」
遠くから名前を呼ばれている気がして、徐々に意識が戻ってくる。
「起きたか? 着いたぞ」
「えっ……あれ」
包み込むような座り心地のいいシートに、完全に沈み込んでいた体をがばっと起こす。
すっかり寝てしまっていたことに慌てて、それまでのことを思い出すために額に手を当てた。
そうだ、買い物のあと食事に行くって話になって……。
私を起こして先に車外に出た桜坂社長は、外で制服を着た男性と何か話をしている。
キョロキョロとすると、そこはホテルのエントランス前のような場所だった。
寝ぼけている暇もなく、すぐ横のドアが開かれる。
桜坂社長は手を差し出し、私の出しかけた手をしっかりと繋いだ。
私が降車すると、桜坂社長は「お願いします」と立ち会っていた制服のスタッフに声をかける。
スタッフは丁寧に頭を下げ「かしこまりました、お預かりいたします」と私の降りた助手席の扉を閉めた。